道化人形(修正版)/板谷みきょう
まします。
サーカス小屋の熱気、渦のような笑い、まばゆい「ありがとう」の瞳たち。
人形はそっと後ろ回りをし、月を見つめながら逆立ちしました。
だれもいない部屋。月だけが、しっかりと見つめています。
パチ、パチ、パチ……
やわらかな拍手が夜の底にひびきました。お月さまの拍手です。
胸がふるえ、声が震えます。
「紳士淑女のみなさま――ようこそ、たったひとりの観客さまへ。
今宵は、涙を笑いに変える道化師が、心をこめて芸をお見せいたします。」
光と影の中で舞うたび、月は惜しみなく拍手を送り続けました。
世界の端でひっそりと行われる、小さな、しかし胸に響く祝祭。
月光が細く
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