鬼吉と春一番(修正版)/板谷みきょう
 
コドク”ば、意味してるんじゃし。

だから澄乃は、吉を村から遠くさ、離すことにして、
すんごく、辛ぇことを、決めたんだ。
心の奥のずっと深いとこで、吉への想いを、ぎゅうっと、抱きしめてよぉ、
ふるえる唇で、別れを告げたんじゃと。
「やっぱし、のけ者は嫌だからよう。もう、遊びに来ねぇでけれ」
そりゃあ、吉を救うための、哀しくて辛ぇ、ウソだったんだ。
だのによぉ。

その夜、ザンザン降りの雨ん中で、吉は、そっと、村を離れたんだとよ。
そして村中に噂が立った。
「吉は屏風山の山奥深くで、獣をむさぼり、草をくらって、鬼になった」と。
村人たちは、おっかねぇがって、村の安泰のために
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