むねの奥がじーんとする/百(ももと読みます)
 
 もうどこにもいないとおもいました。それでも、きちんと生きています。

 お部屋からおそとにでると空気の甘さにびっくりするようになりました。吸ったあとに吐く息が甘いのです。気だるさで溶けたソフトクリームみたいな感じ。



 この街の図書館の角部屋には市民の作品が展示されているスペースがあって、いまは木材のボードがむきだしとなり、殺風景な均一空間にひとり座っていられる心地のよさで、なんだかむねがいっぱいです。

 館内でながれるオルゴールの音に耳を澄まします。誰もぼくのこと気にしていません。いらないもののいなくなったながれのなかで、きっと、ぼくもいなくなってゆくのです。


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