海辺の子供たち/ひだかたけし
薄暗さ覆う海辺、うねり寄せる波間の渦に
子供たち二人、あっちとこっち何か大っきな貝を掴もうと盛んに手足を動かして動かして
自分たちに肉体があることの自由自在を喜び、歓喜の木霊のやがて波間の渦と同期しながら
パパパパパパ 何かを掴まえて両手を上げ、僕入賞した!銀の一円玉のメダル掲げて男の子が叫んで叫んで叫んで
波の迫る海の迫る薄暗い時のうねり残響もう止まず
私たちこの世界と戯れながら肉体の中で律動し循環し知覚の渦巻きに応えつつ、旅立とうとするもの掴もうとしながら
私は私でありながら私から出ていこうと
懐かしみ憧れ共に抱え巨大な静かさ潮の匂い只々かぐわしくかなしく
何時しか私は私の子供たちと共に肉体を脱ぎ捨てこの海辺から大海原へと泳ぎ出す間合い伺い
内なる奥処の宇宙へと意識だけが拡がりいく
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