茜の五重の塔/秋葉竹
 


車を走らせていると
だだっ広い芝生の平原にすっくと
黒い五重の塔が建っていた

ちょっと気になって
駐車場を探して
その五重の塔をみにいった

想像どおりの大きさで
みあげると
沈みかけの茜の夕日を逆光に
荘厳な感じさえ漂う姿

ふたりでブラブラ歩いていると
四人連れの家族に
「写真を撮ってくれませんか?」と
スマホを差し出された

「いいですよ」とやさしげに答えた

むかしからそうだ
ひとに道を聞かれたり
ひとに行きかたを聞かれたり
ひとに時間を聞かれたり
ひとから声をかけられることが多い

きっと無難な真面目なひとにみえるのだろう

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