縁側/りつ
 
南向きの陽当たりの良い縁側で
母は新聞を読むのが好きだった

そこは
冬でも小春日和で
いつも長閑で寛いでいた
母もまた然り
これと言って趣味がなかった母だが
いつもの厳しさはどこへやら
ときどき転た寝をして
船を漕いでいた

   こっくり
        こっくり

蓄音機やトランジスターラジオがあれば
似合いそうな日溜まり
猫がいれば
完璧だったかもしれない
母は猫嫌いで
猫を常に邪険に扱っていたが

母、
というひとの
本当の姿を
私は想像したことがない
母には野心があったように思う
絶えず
満たされなさに抗っていたような


縁側で
ゆったりと爪を切っている母から
珍しく
鼻歌
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