伊丹は何処へいったのか/室町 礼
血の一滴もなき
木々が
風にゆられて
まるで人間のように語っている
消えた空をなでる葉先は
キーボードになって
「We are poets」
と打ち込んでいる
七輪の赤い炭火の上に
反り返った烏賊を裏返しながら
こいつも
思い切りあぶられて
しばかれれば
味も出るというものを
伊丹を乗せた
蒸気機関車は後ろ向きに走り去った
冷蔵庫を探ると
明るい膣のような奥の奥
ペラペラ容器に一ヶ月前の豆腐が
黄色い防腐剤を浮かべて
まだ豆腐の顔をしている
どうして堕ちないのか
ここでまだ
貞操を守っている
空なき空の断片があつまって
寒いカタチとなったカラスが
血の一滴もない木々の枝に
並んでいる
おまえたち 伊丹がどこへいったか
知らねえか
無限のループを歌う
羽なきカラスたちよ
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