水晶の無垢/秋葉竹
たいに何処かへ向かっていたし
それでも必ず訪れるあしたの中に
幸せが絶対無いとは
だれにも云い切れないように
それが不確かな手触りだとしても
水晶の無垢をこの手でたしかに
触れたのだという虹をつかむような夢をみる
それでもよければ
なにかさまざまな生きる歩みの意味が
この胸にうっすらと浮かびあがる気がする
今になって
ただ佇んでいるだけという訳にはいかない
白い光を吐く唇を
黙ってみつめつづけたのは
おさないころ
あのひとに憧れていた冬の朝
すこしもの憂げにみえたからか
それだけでなく
きっとあのひとは
水晶の無垢のその重さを
意にも介さず
薄氷のうえを飄々と
歩くように生きていたのだと想った
あえてそんな生き方を
してみたいものだと
ほんとうのことなど
なにもしらないくせに
心の深いところで
すごく切実に祈ったのは
恥ずかしいくらいまっすぐな瞳で
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