×零の幸福/ただのみきや
んだん輪郭を忘れてゆく
織りあげた生をもう一度
時間へほどくことはできなかった
だから燃やした
香の煙を編み上げて
あなたの素肌を覆いたい
たましいの毒が入れ墨より深いところから
浮かんでは皮膚を這う
すぼめた唇のような隠語の蕾で
淫靡な地図を辿りたかった
そうしてわたしもまた
骨と皮の空ろな楽器と化し
一晩中むやみにかき鳴らされるだろう
小さな舟にのって
パレットナイフが深く荒々しく奏でた
まばゆい狂気の陰影 その奥へ奥へと
いつまでも発情期のふたり
いつまでもプラトニックのまま
美しい誤読のすれ違いを続け
互いの航跡をたどる
ヒエロニムスの快楽の
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