満月/そらの珊瑚
夢のなかで喋りすぎて
目覚めた朝の喉は
砂漠の楽器
おはようの声は
なににも震わせず
深い秋の空気に溶けていくだけ
あたりまえのような朝が(声が)
あたりまえに訪れるわけではないことに
いつ気づいたんだろう
小鳥はさえずり
蝉のいのちは地下で眠り
レンガ色の病葉は地球に不時着する
今日はカーテンを洗おう
出来ればエアコンのフィルター掃除も
夏に買って飲み忘れていた
不二家レモンスカッシュの缶を
冷蔵庫から取り出して
グラスに注ぐ
飲み干せば
きのうの晩の孤独な月が
胸の中で輝き出すよ
朝 ふたたび満ちて
人もまた
満ちて祈るよ
少し
いびつな、まるい月
目覚めた炭酸の泡は
砂漠の花火
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