裸の枝に実る柿/菊西 夕座
 
裸の枝に実る柿

菊西 夕座


季節が頭をめぐらせて仰ぐ空へと囁くたびに
懐かしさは生まれた日の先まで枝を伸ばして葉を落とす
ひと昔まえの世代にまで影は大きく成長してしまい
私という範疇を超えて郷愁は人々にまで深まっていく

年を経るということの実りを柿の木に重ねて胸は色づく
葉は減りながらも増していく哀切に過ぎた時代が呼応して
裸になった寒々しい枝に目も鮮やかな朱色の灯を散りばめる
そばに古家があれば一段と風情を高めて晩秋を尊く潤わす

『翳りゆく部屋』で歌われた「別れの気配
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