街/佐白光
 

 閑散としている通りの端に

 通いなれた立ち飲み屋がある

 店主の女将さんは愛想がよくて

 ついつい飲みすぎてしまう

 術中にはまっているようだ

 ふと奥に目をむけると

 女将さんの背中が寂しそうで

 抱えているもがありそうだ

 八百屋のオジサンは閉店の準備

 売れ残りで片づけるものが多すぎる

 静かに丁寧に自分の人生も片づけているようだ

 通りのむこうでは区画整理が始まっている

 多くの住人が行き先を探している

 顔に当たる風が異様に冷たい

 世間に吹いている風は後ろ向きだ

 前を向いて少しづつ前進するんだ

 挫けそうになったら泣いていいんだよ

 どこかでそっと見ている人がいるから

 

 
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