全行引用による自伝詩。 06/田中宏輔2
ソニアは悲鳴をやめ、しわくちゃになったシーツを引っぱり上げて台なしになった魅力を隠すと、みっともなくのどを鳴らして悲劇的な表現に熱中しはじめた。ぼくはものめずらしい気持で彼女を仔細に眺めたが、それは演技だった。でも彼女は女なんだから特に演技してみせることもないのだ、この意味がわかるだろうか?
(キリル・ボンフィリオリ『深き森は悪魔のにおい』2、藤 真沙訳)
むかしというのはいろんな出来事がよく迷子になるところでね
(ロバート・ホールドストック『アースウィンド』4、島岡潤平訳)
図書館で、だれかが硬い赤い表紙の古い本を床に投げ落とす。それを拾って題名を読む。『幸せな網』
(ウィ
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