船底の歌/降墨睨白島/腰国改修
暗い船底には何もない
だから、光がないのは
分かっていた
光無き世は船底の写し世
上の階層には
仮人たちが満ちていて
光より眩しい一条の希望を
奪い合っている
ここには剣山がある
剣山しかない
ここには俺がいる
叫んでも
叫んでも
届かないなら
自ら逼塞した
気道を切り裂きたい
血と肉と魂の塊
剣山を、殴る
血しぶく拳で
『血の王物史』を
読みながら
シャドウボクシング
俺は嘘が嫌いだ
嘘を憎む
シュッ
シュッ
空気を打つ音が響く
シュッ
シュッ
シュッ
シュ
嘘を叩き潰したら
真実と戦わせてくれ
この船底で
まだまだ俺は
空気を
撃ち続けなければ
ならないのか
俺は仮人を
次層を超えて
明るいリングに立つ
まさか
希望は自分の手で
創り出せ
と言ったのは
嘘だったのか
船主に問う
問うが答えはなし
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