つめたいくま/はるな
 
さくれて、でもやっぱりそこで眠る。ときどき紫いろの、なんという名前かはわからないけど、きれいな花をむしってきては飾ったりもする。秋のはじめにあらわれるつぶつぶの紫いろのあの実は、かわいらしいがかたくてまずい。ばらばらばらばら、木から毟るのだけがたのしい遊びだ。
そのつめたいくまたちが、長い眠りのための寝床をつくれずに、あちこちで縮んでいる。ああ透き通ったやさしいつめたいくまたちの姿がもうどこにもなく、手のひらよりも小さく干からびて、あのきらきらの透明な毛も、まちがいみたいにみんな抜けきってしまった。街に降りた熊たちを慰めるものももういない。
つめたいくまたちがいなくなったら、たぶん山はもう一層冷え固まって、やがて来る春を小さくしてしまう。あたためてあげようとすると、くまは、つめたいくまたちは、たちまち溶けてなくなってしまう。
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