つめたいくま/はるな
わたしがここで話すのは、木の実をたべ、透明の毛をもち、草にねむるつめたいくまたちのことだ。街に降りた熊たちの、(淋しい淋しい)という餓えた声に今日も胸をいためているくまたちのことだ。
たしかに秋がどんどんみじかくなって、いつもだったら透き通ってひかる透明の毛も、こんなにざらざらと荒れて鈍色になってしまった。でもまだ風が吹きぬけば向こうがわの湖がみえる。つめたいくまたちは少ない実を、つぎの誰かのために、もっと少なく食べる。もしかしたら丘のほうの獏たちが食べるものに困ってここまで流れ着くかもしれないし。あるいは、そこまで考えていなくて、単なる習性として。長すぎる夏を越えた草はいつもより固くささく
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