秋無月/月乃 猫
 
素直さのない
夏の熱砂が残す灰、夜想曲の静かさで
降り積もる
森は、夏の温もりになごり
いつか 一つの季節を追いやる
季節風は海の果てに姿をけし
かけ違えられた犠牲の森の彩
見捨てられたように 色を変えず
痛みは、季節の伽藍を焦土の色にした
蝉の撓んだ夏の残響、
それさえも いつまでも鳴りやまず
もしも
あきらめることのない
温(かい)暖(かい)化の
薄いその重層化されたわけをみつめ
帰りたいあの時へ、
見落とし 見ないようにしてきた
降り落としてきたもの、
叶わない この時を支えてきたものを想う
守りたいものは、いつも手の中を
すり抜けてしまい
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