秋、帰る 蒼風薫/梅昆布茶2
それでも秋は帰らなくてはならないし、とても帰りたかった。天のお国が里である。
いよいよ催促の雨がふりしきり始め、時が待ってはくれないことを秋はひしひしと感じ取っていた。
いつもの荒川の土手で秋は悩んだ挙句に結論に至った。つまらない自分がいっそ身投げしてしまおうと、そう決めてみたのだ
次に生きる望みはもういいだろう。抱かなくても構わないと
少女が久しぶりの明るさを浮かべて部屋で電話の受話器を抱えていた
『お父さんが・・・それ本当ですか』
『本当にそんなことが・・・』
それだけ確かめたのち秋は姿を消した
移ろい終わったのである。生まれたばかりの季節の訪れの頃に、海は秋を飲み込んだ
秋は海へ帰っていった。天のお国ではなかったその秋は二度と再生することなく
新しく回ってきた冬、は天が再びお腹を痛めた子供である。
帰った季節は甘いミルクティーの夢を見ながら、自分の時間としての終わりと引き換えに
再びの庶民としての安らぎを得ることのできた少女に、最後の恋をしていたのだった
。
秋は真実帰っていった
』
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