尊さ/道草次郎
ぼくが先に来てゴミを捨てていると、
かならず
「ありがとうございます」
と言ってくれる。
お父さんの失敗談を話すAさんが好きだ。
そして、
昔、少し心を病んでいたという話を聞くと、
ぼくは何も言えなくなる。
Aさんは、
ふつうのことをふつうにとらえる人。
むりに複雑にも、
ばかに単純にもせず、
何事も自然に受け止める。
ノーベル賞だとか、
サム・アルトマンだとか、
そんな名前が飛び交うこの時代に、
ぼくは思う。
Aさんは、
たぶん、尊い存在なのだ。
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