冬の街にて/由比良 倖
 
赤い、ドライフラワーに。


私に会いに来る人、あれらは私の何に会いに来るのだろう、
私には私の表面しか見えない、愛され過ぎている、
私はここにいないのに。

文化には体重がある。改めて私が服を着ることが奇妙だ。
装いだけで――


コーヒーが来る。私は「ありがとう」と言う。
揺れる、訳の分からない場所に思える。

改めて私のいる場所を見渡すと、ここは廊下だ。
そこには、意味なんて無い。
壁に触れると、冷たさに驚く。
恐竜の骨のように冷たい。

雨。
給仕の女の子が外に立っている。
何故か私だけが雨に打たれている。
いや、私はソファーに座っているのだ
[次のページ]
戻る   Point(4)