6/由比良 倖
 

金魚の色を掬うように、
未来の匂いを言葉で掬う、
ディスプレイには光る女の子が映っている。
彼女が衛星から静かに送られてきたことを、
僕は知っている。


孤独な宇宙に、
詩は似合っていて、
ギターも似合っていて、
英語も似合っていて、
でも家族は似合わない。


誰も予定表には書き入れないけれど、
誰もが死ぬらしい、
死んだら何もかも消える、
消えることはアートだから、
宇宙の全てが美しい。


心の戸締まりをして、
小さな友だちを見付ける。
どんぐりみたいな友だち。
旧校舎の裏で配水管を掘り出して、
僕はそこに血のネットワークを埋めた。


ひとりふわふわと飛ぶ、
遠い切手のように。
夜明け近くに揺れる、
かすみ草のように。


真夜中の香水の匂いがする。
少し錆びた血のような。
煙草のにおいの染みたスタジオで、
真夜中、マイクロフォンと恋をする。
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