わたしの白い馬/そらの珊瑚
 
夜空に雲たちが浮遊していたが
いくつかのそれは白い馬だった
わたしの馬はどれだろう
目を凝らしてみても
それらは似たりよったりで
見分けがつかない
夜に生まれたものたち
東の空に出たばっかりの
満月に一日足りないだけの明るい月の周りを
軽やかに駆けていた
いくぶんそこは重力と磁力が弱いのだろう
囚わるものから放たれ
自由な意志をもって
踊る絵画のようだった

翌朝
いつものようにわたしの白い馬は
うつつのマグカップに戻ってきていた
生きていたのに死んだように動かない
おかえりなさい、と朝に言うのは変だろうか
桃林さんは
そんなことない、
おかえりなさいは
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