全行引用による自伝詩。 03/田中宏輔2
 
茶の本』第一章、村岡 博訳)

この世のすべてのよい物と同じく、茶の普及もまた反対にあった。
(岡倉覚三『茶の本』第一章、村岡 博訳)

 ひので貝は美しくて、壊れやすく、はかない。しかし、だからこそ、それは幻影ではない。いつまでも在るものではないからといって、一足飛びに、それが幻影であるなどと思ってはならない。姿かたちが変わらないからといって、それが本物かどうかの証拠になるわけではないのだ。蜻蛉(かげろう)の一日や、ある種の蛾(が)の一夜は、一生のうち、きわめて短いあいだしか続かない。しかしだからといって、その一日、一夜を無意味だとする理由にはならない。意味があるかどうかは
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