全行引用による自伝詩。 03/田中宏輔2
 
味することを知らなければ、まだ経験が浅すぎて、きみに向かってやってくる犬が、きみが逃げるよりも速く走れるのだということを知らなければ、この世はどれほど異様なところに見えるだろう。それをきみも想像してみてほしい。大人は急ブレーキを踏まねばならない事態に遭遇したとき、腹を立てるし、天気予報がいい加減だったというだけで、不機嫌になることがある。
 子どもの立場に立ってみれば、人生とはつねに猛スピードで過ぎてゆくか、じれったいほどのろのろと過ぎてゆくかのどちらかなのだ。とっておきのアイデアがひらめくのは夜寝るときだし、サーカスはあまりにもはやく終わってしまう。サヤインゲンはいくら食べてもなくならない。漫
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