シーレイ(曼珠沙華)/りつ
 
紅い花のトーチライト
レイたちが泪を見失わないように
導くような毅然さと
燃え上がる儚さと
叶わなかった夢のレクイエム
薫りはあらずして
ひたむきに一斉に咲く
 あれは冥府の王が憐れに想い
   或いは魂魄の血でしょうか
いいえ
      そう
            もしかしたら
とても
     
    近しい

月の雫は青ざめておらず
生きているより紅くて
死んで尚残る想い
情念と呼ぶには潔すぎて
未練と言うには美しすぎて

            哀 し  い


此の花が枯れたら
おそらにかえりましょう
だって
懐かしい呼び声がする

其処は哀しさと寂しさに満ちていて
澄んだ夜気が静かに放電し
小さなハミングが
マドリガルを囁いている

  私は毒に蠱惑され深く眠る
    二度と目覚めぬほど遠く沈む



結ばれることを約束されていた名前と名前
思い出したとき
私は紅く開いてゆくのだろう

  
    赫く咲く聲が
      私の耳朶を噛んだとき

私はついに覚醒する
戻る   Point(0)