リトルブレイン/おまる
 
で「カトパン」と呼ばれており、つきあいも良くて、まわりの諸先輩からも可愛がられていた。カトパンが席を立ち、おれのデスクのすぐ近くにある冷蔵庫に向かってきた。微妙な足音の調子から彼女が近づいていることがわかる。すぐ後ろ、歩いてくる音がする。そして、目の前を通る。フワっ、といい匂いがした。勿論、おれはモニターを凝視している。彼女を見ないように「努力」しているのだ。おれは、おれの目の前を通る誰であろうと、その人を見ることはない。興味が無いから。ところが、彼女に対してだけは「わざと見ない」ような感覚を持っている。それは、このシチュエーションに限定されない。のみならず、この感覚は、ほかならぬカトパンも、おれ
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