リトルブレイン/おまる
 
員は暗に示したのだ。「黙れよ」と。そのあと、青山通りの裏手にある駐車場に車を止めて、通りに出る。暫く歩いていくと、いくつかの紳士服店をめぐる。一応サラリーマンという身の上、衣服類では唯一スーツにだけは興味があるので、ブランド品で埋め尽くされた青山通り沿いでも、退屈しなくてすむ。最初にはいった店内は日本とは異質な、型の如き「アメリカ風」だった。焦げ茶色の渋い基調、エグゼクティブを想起させる、輝くような歯茎の、笑顔のモデルの写真、どいつもこいつも、資本の手先どもである。エツヒコは「これぞアメリカの良心」と愛してやまない。入ると扉正面に大きな写真が掛けてある。スーツを着たスーパーモデルの外人たちがヘラヘ
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