リトルブレイン/おまる
わけだが、それまでのこと。爾来、プライベートでの付き合いはほとんどない。いまどんな女と付き合っているのかとか、そもそも職場の外ではどんな顔をしているとか、いっさい知らない。
どういう風の吹き回しか、じつに数年ぶりに「週末、つきあえよ」と、エツヒコが声をかけてきた。新人だったあの頃から、うろつく場所が変わってなかった。まず新宿である。新宿伊勢丹、表参道、銀座、
「タイムトラベルに往こうぜ」
と言ってきた。果て、何の事かとおもったら、なんのことはない、時計屋巡りの事なのだった。彼が嗜好品に現を抜かすのに付き合えと。でも、おれにとっては金の無い休日である。全然、贅沢が好きではないし、況
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