東小金井『ナポリタン』/北村 守通
たかもしれない。しかし、今の私は無力だった。一口進めるごとにケチャップの重みが胃にズジン、ズシンとのしかかかってきた。いったん休むことにした。かなり頑張ったつもりだったが、まだ皿は見えなかった。
「大丈夫か?」
古田が心配そうに覗き込んだ。
「きついねっ!想像以上だわ!」
吹き出る汗をおしぼりでふき取った。ついでに首の後ろも拭った。白いおしぼりが真っ黒になった。
「いや、でもうまいよ!うまいけど、きついよ!」
少し休憩が必要だった。私は水を口にした。ほんのりレモンの香りのする、これまた懐かしい味だった。
「一口試してみる?」
「要らない」
「懐かしい味だよ。」
「要らない」
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