東小金井『ナポリタン』/北村 守通
やり直しがきかないから悔いるしかないのであった。
「タバコ吸っているときだったらいざ知らず、その時はもうタバコをやめてしばらく経っていたからね。それで変に思って信じちゃいないもんだから『セカンドオピニオン聞いてきます』って地方のがんセンターに走ったんだ。そしたら『間違いなく癌です』ってお墨付き貰ってさ。」
古田は黙って私の方を見つめていた。
じっと私の方を見つめていた。
不安そうに見つめていた。
トマトジュースはやはり一口もつけていなかった。
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