東小金井『ナポリタン』/北村 守通
ナポリタンにもうタバスコをもう一振りしてかき混ぜてみた。これで少しは味が変わるだろう。そうすればまた食が進むかもしれない。
「その後、経過をみるのにCT撮影何回かやっていたら、肺に癌があるのが見つかって。」
古田の顔が一瞬青ざめ、強張ったように見えた。
「癌?」
「肺腺癌とかいうやつだって。」
フォークを回してみた。赤い麺が巻き付いて団子になった。それを口に持っていった。辛さよりも酸っぱさが打ち勝っているように思えた。やはり失敗だった。
「最初は何かの間違いだと思ったよ。」
もう一口試してみた。タバスコはかけない方がよかった。しかし、もう後戻りはできないのであった。失敗とはやり
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