きよせかわせ清き夢/ひだかたけし
 
うずまくうちゅうの
端っこにして
まん真ん中、
川瀬さんを背負い
ずぶずぶ泥濘む
薄闇のこの土地を
足もとに気をつけてと
背後から鋭くも温かな声
一歩間違えると
ずるっと土の崩れ沈み込み
ずぶずぶ深みへ深き闇へ
ずんずん深淵の呑み込み来て
気をつけて気を抜かないでと
背後からの声を励みにし
一歩一歩慎重に足運び
右へ左へ寄れ曲がりつつ
薄暗がりの視界の中を進みいけば、
ぽっと薄紫の明るみ訪れ来て
辿り着いた硬きこちら側の大地
ほっと息をつき
川瀬さんを背から下ろせば、

ぽわんすぅうと
夜の明ける
そうして自ずと
手と手を取り合い
仄か小さな柔らかみ

安らぎに包まれ目を覚ます 、

いったい誰が何が
この渦巻く宇宙を廻すのか

来たる問い掛け
すっと受け容れ
硝子戸開ければ、
薄紅に染め抜かれた
この現の夜の明ける

名は何ていうの?
問えば川瀬とだけ
トーキョー清瀬に住む 
この私に残響す 、

あははと想わず小さく笑い

僕の残余今生に
君が課した宿題だね、

川瀬さん と。


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