浄水場のある街/
たもつ
弟の息遣いが聞こえる
浄水場のある街に
敷設された線路を
今日も走っている
誰よりも足が速くて
誰よりも
列車の真似が上手だった
弟は皆から
関口さんと呼ばれていた
だからわたしも
関口さんだった
他の関口さんにも会いたくて
手紙を書く
数日後、わたしからの
手紙が届く
関口さんがほんの少し
わたしたちと重なる
警笛が鳴り響く
何度も何度も
弟が泣きながら
練習していた音
けれどその音色だけは
いつまでも
幼いままだった
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