朝を迎える/はるな
 


雨降り 夕暮れを巻いて
物語を待っていた
バスが来て 人を降ろし
タクシーが来て 人を乗せて行った
日々は車窓みたくぼんやりで
右から左へ流れていった

むすめに 毎日 頬擦りをして
頭を撫で つむじの匂いを嗅ぐ
晴れてる日は 晴れてるよと言い
曇天には 曇りだよと言う
瞼をあげさせ 水を飲ませ 髪を梳く
長い一瞬のうちに あなたは
こんなに育ってしまった

恋人よ いつまでも何も知らないままで
わたしに愛されてくれないか
むすめよ 何ものでもないままで
いつまでも愛している

靴を買い 爪を買い 夜を迎え
諦めを挟んで 日常が在る
床下で飼う物語に餌を与えるために
花を売り 時間をはかり
そして朝を迎える


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