忘る夏/青の群れ
夏の思い出がやさしい獣のように
部屋の隅でうずくまっている
私はその背中を見つめながら
眠ることもできずにいる
エアコンが微かに唸り
ぬるい空気を押し返す
飲み残しのペットボトルの水は
惰性で喉をすべり落ちていく
テレビの砂嵐が部屋を埋め尽くして
耳鳴りのように時間を削り取る
記憶にそのノイズを混ぜ込んで
少しずつ境界を曖昧にした
寝苦しい夜は忘却の練習のようで
朝を待つことも夢を見ることもできず
ただ肉体だけが夜の奥に漂う
終る夏
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