旅がまたはじまる/唐草フウ
(じゅるりと甘い豊水梨
まだ食べさせられていない
疲れこんで放心
ひととおり過ぎてペタと座り込む)
一人で悠悠と横たわりながら耐える
くらしと
半生を捨ててあまい缶詰の汁に
溺れる園で泳ぎ続けるくらし
ああ、来年の高校野球を楽しめるのはどちらだろう
(深緑の
セカンドバッグ
に入っていた
みみず文字のメモ帳)
正解のないわがままな選択
どちらを選んでもきっと苦しい
それでもたぶんあなたは赦すから
押しピンから外されて落ちる痛みとなる
旧友に送るつもりで 便箋に書いていた
みみず文字で吐露したあなたの少しの諦めに
胸がキンとした
その後は空白
何本もの罫線がこちらを見てやさしくさよならを伝えている
(それは長くて短い旅のはじまり)
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