【わが短歌・俳句入門】<女性歌人と海>/藤原 実
 
」の比喩だろうから。

昭和二年生まれの尾崎左永子は、



硝子戸の中に対照の世界ありそこにも吾は憂鬱に佇つ


と歌った。その昭和生まれの歌人たち。



冬海の暗さ世界のつまらなさ灰色にしてなまこの眠り
                         馬場あき子(S3〜)


水桶にすべり落ちたる寒の烏賊(いか)いのちなきものはただに下降す
                         稲葉京子(S8〜)


馬場の歌はなんだかじぶんの内部の海にいやけがさしているような口ぶりです。
稲葉の歌はこれは堕胎のイメージ
[次のページ]
戻る   Point(2)