【わが短歌・俳句入門】<女性歌人と海>/藤原 実
 
たるゆめみるひとのゆめの帆柱
                          紀野恵(S40〜)


ヨットがつながれているのだから、「吾」は海ではなくて陸側だろう。それにしても、



あけがたのわが寝台にちかづける帆船ありて人死に給ふ   葛原妙子


とではまるで裏返しの世界ではないですか。



あさやけて海へ運ばれゆくまでを疲れし女のごと眠る河
                          辰巳泰子(S41〜)


ここでは女は海ではなくて河です。はたしてこの女は海に注ぎ込んだ後、再生するのだろうか?それとも海は墓場と化してしまうのだろうか?
残念ながら『現代の短歌』はここで終わっているのでぼくにはわからないのですが。

新しい世代の女性歌人は、どんな海をうたっているのでしょうか?


              (初出:1999.2 @ニフティ<現代詩フォーラム>)


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