そっと だいじに 二篇/唐草フウ
 
わたしが森でじとじとになっていたとき
ショコラウサギのおかあさんが
やさしくガーゼで顔をふいてくれた
ホームのベンチにひとり座って
走り去る夜汽車を見送っているだけでは
ありえない出来事だった
かみしめた痕のついたおしゃべりなくちびるも
びしょびしょになった静かなまつ毛も
こころの季節なんて関係なしに
受話器もおいたままで
やさしくやさしく拭いてくれた
そのうち小鳥たちが揺れながら
迎えに来るからねと





大きな砂時計くらいの距離を
42cmの距離をしっかり保つ
朝の人とスワンでお話をした
本当の姿は
話してくれないけれど
聞かなくてもよかった
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