終わり続ける夏の日/ホロウ・シカエルボク
どうかについては結局訊くことが出来ないままだった、今僕はあの高架下の近くを歩いている、空はやっぱり過剰に晴れ渡っていて、蝉がヘヴィ・メタルのフェスみたいに大勢で騒ぎ続けている、どこかの山で枯草を焼いている匂いがする、少し早い赤トンボが僕が危険な生きものかどうかを確認するかのように近くで少しホバリングをしたあと飛び去っていく、十五分に一台くらい、もの凄く高速で走る車が一本道を走り去っていく、夏の終わりを歌った歌を聴きたくなった、時々人生が凄く残酷に思えるのは、人の心などお構いなしに過ぎていくせいだ、ねえ君、今では僕は、こんな夏の終わりが世界の終わりみたいに感じることがある、そしてそれは刻印みたいに僕の心に刻まれて、思い出すどころかやたらと付き纏って拭い取ることさえ出来やしないんだ。
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