I FEEL FOR YOU。/田中宏輔
わからなかったことやね。愛するあまりに傷つくことに耐えられなくて、愛することをやめるということ。なんという弱さだろうね。その弱さがいまの自分をつくったにせよ。
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湯になる。まっすぐな湯になる。長時間つかっていると、湯が、ときどき、ぼくになる。ふと気がつくと、ぼくが湯になって、裸のぼくの身体を抱いていたりする。あ、違う、違う、と思うと、ぼくは、ぼくのなかで目がさめて、ぼくのほうが湯を抱いていることに思い至るのであった。
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注射器を見つめていると、しゅるしゅると、ぼくが、注射器の円筒形のガラスの壁面に噴き上がってくるのが見える。ぼくは、ぼくの狭い血
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