I FEEL FOR YOU。/田中宏輔
 
詩の引用からはじめたのだったが、そのあとに芭蕉の句を2つ引用してつづけることにする。





「命二つの中に生きたる桜かな」と「さまざまの事おもひ出す桜かな」の二句である。パースペクティヴがぜんぜん違っていて、まったく異なるフェイズの観想を持たされたのだが、この二つの句が示唆するアスペクトで、文学表現のほとんどが書き尽くされるような気がしたのだ。


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ここで、与謝野晶子の「わが恋は虹にもまして美しきいなづまにこそ似よと願ひぬ」を、この芭蕉の「命二つの中に生きたる桜かな」と「さまざまの事おもひ出す桜かな」の二句に結びつけることは、それほど難しいことではないで
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