I FEEL FOR YOU。/田中宏輔
い血管のなかから解放されて、より広い大きな注射器の円筒形のガラスのなかにひろがり展開する。その喜びといったら、なににたとえられるだろう。
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夢をみてまどろんでいたのに、よくその夢を忘れてしまう。まどろみから抜け出してすぐのことだというのに、どんな夢をみていたのか、ぜんぜん思い出せないのだ。夢をみているときと起きているときとを合わせると、ぼくのすべての時間になるのだろうか。夢をみているぼくと、起きているぼくとが同じぼくかどうかわからないけれど。
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さっきまでうつらうつらしていた。うつらうつら夢を見ていた。ぼくは駅の構内を行き来する人たちの姿を真上
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