I FEEL FOR YOU。/田中宏輔
 

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引用詩をつくるときにも、感覚的なよろこびと、知的なよろこびがあった。単純に分類すると、個別的な経験の把握と、統合的な知の再編成である。英詩翻訳においても、この両方のことが、ぼくの身に起こる。とりわけ、英詩翻訳は、ぼくの知らない単語や熟語や構文があるせいで、ぼくに新しい知がもたらされるのであるが、


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さらに彼らが詩句において知と格闘した跡をきっちりと追うことによって、それまでの知識との統合といった現象が起こるのだけれど、同時に、ぼくとは違う体験と言語経験を経てきた詩人たちの感覚の痕跡を追うことによって、ぼくが、ぼくの知らなかった新しい感覚を感じとれたりす
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