98番目の誘惑/林 理仁
 
になった。
素直に自分の思うままに生きようと思ったのだ。 

私の家は親が学歴主義なので、高校を卒業したら、大学に進学するのだろう。
親の敷いたレールの上を歩くのに何か抵抗があるわけではない。ただ、私には他のみんなが持ち合わせている楽しさというものが欠落している気がするのだ。
この繰り返しの毎日の中に、他の人にはない楽しさがもしもあったならば、私は一生幸せなはずだった。
そんな風に考え始めたら、将来なんてトンネルの先のようなもので、今が満たされずに、なぜ将来が満たされるのかと見えない何かに歯向かいたくもなる。
だけど歯向かったところで明確な答えが何かでるわけでもなかった、ただぽつんと
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