言葉にそえば/みぎめ ひだりめ
おびただしい埃が 肺を満たしている
生きているだけで その分だけで
身を汚すほどの 罪が
この部屋に打ち捨てられて 項垂れている
伸び荒んだ前髪が 目を刺している
おれは訳もなく 息を潜める
本を まだ捨てずにいる
壁際の隅っこで ちかちかと
色褪せた インクの炎が見える
むかし母さんが買ってくれた
それだけのことなのに
目障りで仕方ないのに 置いてある
思い出すことに苦しんで
ただ慰められている
動けないのは ちゃんと生きていないから
悲しいのは 死んでいないだけだから
もうちゃんとしたって きっと遅いから
笑われるのが怖いから
叱られることもなくなっ
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