しーっ! 静か.......に。/室町 礼
 
わたしと同じ年輪をもつ今日という日に捧げるもの
があるとすればバラの花束だろうか、それとも一膳
のおこわ飯だろうか。自己憐憫に酔いながら一本の
線香を立てれば煙の向こうから、ゆらゆらと亡霊の
群れが立ち現れてくる。それがだれであれ皆わたし
の犠牲者だと断言できる。ベトナム人であれ居留地
にいる先住民族であれ北朝鮮人民であれアフガニス
タンの人々であれ、ウクライナ人やロシア人であれ、
かつての恋人であれ、妻であれ、知人であれ、父母
であれ、わたしは黙って頭を垂れるしかない。生き
るとは日々積み重なる他人の死である。きのうも病
院や避難民テントへの爆撃が繰り返された。しっ!
 
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