LIVING IN THE MATERIAL WORLD。/田中宏輔
 



そもそも、形式は存在の入れ物であって、存在は形式がなければたちまち蒸発して消滅してしまうのだ。魂というものが、人間という入れ物がなければたちまち蒸発して消滅してしまうように。形象や色彩や感覚といったものが、事物や事象といった入れ物がなければ、たちまち蒸発して消滅してしまうように。


  〇


二人がはじまりだったのか、恋がはじまりだったのか。恋があって、二人がその形式にあてはまってしまったのか。恋という形式が二人の存在を必要としたのか。あるいは、同時生起。それとも、恋が存在で、二人が形式だったのか。あるいは、二人がじつは恋で、恋が二人だったのか。考えるまでもなかった。
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