COME TOGETHER。/田中宏輔
。ぼくらの身体とこころを生き生きとしたものにしてくれる、この水というものの単純さよ。この言葉というものの単純さよ。これら聖なる単純さよ。
〇
ぼくのなかで、分子や原子の大きさの舟が漂っている。その舟には、分子や原子の大きさのぼくが三人乗っている。漕ぎ手のぼくも、ほかの二人のぼくと同じように、手を休めて、舟のうえでまどろんでいた。舟がゆれて、一人のぼくが、ぼくのなかに落ちた。無数の舟とぼく。
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きのう一日、いや、いつもそうだ。ぼくはなんて片意地で、依怙地なんだろう。それはきっと、こころが頑なで脆弱だからだろう。どうして、恋人にやさしくできないのだろう
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