詩の水族館/ハァモニィベル
 
先にランプをつけたその奇怪な魚が
  ランプの光をかざして獲物をあさり歩いている。
水中から砂地に這い上がって卵を産みにくるのは亀だ。
  カニは、つめをふりたてて、砂地を横ばいしながらエモノを狙う。
  月夜に目玉をつき出し探していると、エモノの方が先に逃げてゆく
  人はぼやく、月夜のカニは痩せてて不味いと。
岩上には色さまざまな藻類が波のまにまにゆれている。
生きているものは美しい。
  イカは決して白くはない。白いのは腐りかけているイカの死がいだ。
  イカは透きとおっている。
燐光のような光を帯びて、レースのハンカチで口元をおさえている貴婦人のようにイカはしなやかに泳
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